朝からまっすぐ渋谷Bunkamuraへ。ジョニー・トー&ワイ・カーファイ監督の「マッド探偵」を見る。
人の心の中に潜む「鬼」が見えるという探偵ラウ・チンワン(以下ラウチン)が主人公。この探偵、女の子がお菓子を見ているだけなのに「万引きしようとしたな!」と注意したり、心がきれい(?)とか何とかいう理由で上司に自分の耳を切って献上したり、まあ一言でいえば、狂ってる(ナイス邦題)。
で、容疑者の行動を調べる手段がまた狂っていて、目の前に犯行時の様子が見えるようになるまで、何度でも容疑者の行動をなぞってみる。容疑者がごはんを食べれば、同じ場所で何杯もごはんを食べてみたり、犯行現場と思しき場所で自ら穴を掘って生き埋めになってみたり。
このラウチンの体を張って初めてわかるという「あしたのジョー」的感覚が非常にすばらしいなあと思った。そのせいか、いつもはゴリラのようなラウチンが今回はひどく男前に見える。私も狂ったか(笑)。
しかしながら、心の「鬼」というやつがいちいち擬人化して登場するので、ハードボイルドなジョニー・トーが好きな私としては、登場人物の心の声を(狂った探偵を通してとはいえ)見せられるのはちょっと嫌だった。
病気とか理由を付けたりしないで、もっともっと笑えるくらい暴走するマッド探偵が見たい(つまりはラウチン版リーサルウエポン、もしくはラウチン版ダーティハリー)。

その後、香港映画祭2本目のパトリック・タム監督「父子」。
去年の再上映だそうだが、今回初めて見て、タイトル・宣伝スチール・解説文と実際の内容とのギャップに心底驚いて、まじで腰を抜かしそうになった。
ろくでなしだが愛のある父親と息子の貧乏だけど心温まる感動ドラマ──と思いきや、違った。アーロン・クォック演じる父親が、賭け事で借金を作るわ、奥さんを殴るわ、働かないわ、女を作るわ、あげくの果てに幼い息子に泥棒を強要するわで、激しく最低(笑)。
途中、あまりのろくでなしっぷりが滑稽すぎてユーモラスに描かれたりするが、そこで「あ、意外と憎めないお父さんなのかも!」と勘違いしてはいけない。ラストまで、ろくでなしのままだから(笑)。
しかし、このなんともいえず救いのない終わり方こそが、本作の個性なのだなと思った。「ひどい話だな〜」とじわじわ後味の悪さが尾を引く映画。ちなみに、私はこの後味の悪さが嫌いではない。

香港映画祭3本目はベニー・チャン監督の「男児本色」。
これは文句なしの娯楽大作。これぞ香港アクション!という、走って跳んで燃えて爆発して、というド派手アクションが満載で、大変面白かった。
特に前々から上手いとは思っていたが、ニコラス・ツェーの体当たりスタントは最高で、ニコラスが走るバスに何度もぶつかるシーン(まさに「ポリスストーリー」のジャッキー)とか、木をかすめてビルの上から落ちる場面には、場内から「おお〜」というどよめきが起こっていた。
それから今回よかったのはショーン・ユー。端正な顔してぼそっと喋る一言が妙におかしかったり、坊主頭で強面なのにトイレで頑張っちゃったり、真面目そうな彼の個性がコミカルな方向に働いて、とてもおいしい役柄だったと思う。
それから、ジャッキーの息子のジェイシー・チェン。泣き顔がお父さんそっくり(笑)。あと、敵役のウー・ジンの回し蹴りの速さにはびっくり。これはドニー・イェンじゃないと倒せないな・・・と思っていたら、いちばん弱そうなジェイシーが必死にしがみ付いていて笑った。
